@マークぐるりん | ムサビ通信とアート、経営コンサルタント

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コンサルティングファームで求められる「話す力」

総合コンサルティングファームのマネージャーが語るコンサルタントに必要な話す力

総合コンサルティングファームのマネージャーが語るコンサルタントに必要な話す力

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皆様はコンサルタントとして必要な力は何だと思いますか。業界知識でしょうか、最先端のトレンドでしょうか。

それらももちろん大事ではありますが、もう少し基礎的な力がコンサルタントとしての力の源泉になります。

そしてそれはすべての役職で基本的には共通です。早速本編に参りましょう。

コンサルタントに必要な5つの力はすなわち、書く力・描く力・導く力・話す力・調べる力です。
これらがコンサルタントの基礎戦闘力を構成する要素となります。もちろんこの土台に論理的思考力があります。

今回お話しする描く力というのは日常業務の中で、常に求められ続ける力でもあります。

 

コンサルタントになりたての頃によくレビュー時に言われることとして、「日本語がおかしい」「このスライドの示唆は何、何が結局いいたいの」といった指摘があります。


日本語がおかしいというのは、普段話している話し言葉のままスライドへ落とし込んでしまったり、単にてにをはが不味かったり、論理展開がおかしいというような様々なケースがあります。

 

けれど、スライドがおかしくても時には手八丁口八丁でカバーすることも可能です。それを「口でカバーする」と言ったりもします。

 

例えば、美大(ムサビやタマビ、日芸等)や藝大においては、必ずコンサルティングファームで行われるのと形式などは異なりますが、内容が似ている講評というものが行われます。


講師が学生の作品を見て回り、自分の番になると学生側はどういう背景やどういう意図を狙ってその作品を作ったのか説明するわけです。

 

この意図や背景の説明次第では、美術作品自体の出来具合が微妙なものだったとしても、案外いい評価をもらえたりします。

 

コンサルティングファームも上記と似たようなところがあり、スライドの出来がいまいちでも主張や伝えたいことが明確に伝えられるのであればそれはある種のよいスライドなのです。

 

もちろんスライドの出来具合は「磨きこむ」と業界用語で呼ばれるくらいにはきちんと尖ったものにすることは求められますが、それも時代の変化や多様な人材を迎え入れていることで変わりつつあります。

 

要は相手に伝わるか、伝わらないか。これが重要です。

 

伝わるか、伝わらないかという意味では美術作品、アートを作り出し講評の度に相手の自分の作品の価値を認めさせるために繰り返し背景や思想を語ってきた美大生や藝大生がもしコンサルティングファームにはいったら、話す力においては初期から一歩リードしていると言えるでしょう。

 

本記事群では①から⑤まで順番に解説していきますが、
これらは実際の業務においては順不同で必要になります。

①書く力・・スライドライティング(いわゆる紙書き力)
②描く力・・構想をまとめ上げる力や、解くべき課題の切り口をみつける力
③導く力・・部下、クライアント問わず関係者を自然な形で、あるいは時にあえて強引な形で誘導する力
④話す力・・相手によって、緩急をつけた話し方と、適切な粒度での話ができる力 [本記事]
⑤調べる力・・デスクトップリサーチの勘所、ヒアリングの進め方

 

④話す力は、さらに3つの要素に分解できるでしょう。導く力と同様に対クライアントの話し方、対上司を含む組織内部の話し方、部下への話し方です。

 

000 目次

コンサルタントとして必要な力はおおよそ5つ。本記事では、話す力にフォーカスします。

 

①書く力・・スライドライティング(いわゆる紙書き力)

②描く力・・構想をまとめ上げる力や、解くべき課題の切り口をみつける力 

③導く力・・部下、クライアント問わず関係者を自然な形で、あるいは時にあえて強引な形で誘導する力

④話す力・・相手によって、緩急をつけた話し方と、適切な粒度での話ができる力 【本記事

⑤調べる力・・デスクトップリサーチの勘所、ヒアリングの進め方

 

 
001 導く力についての補遺編

④話す力は、さらに3つの要素に分解できるでしょう。導く力と同様に対クライアントの話し方、対上司を含む組織内部の話し方、部下への話し方。

 

④-A. 対クライアントの話し方

対クライアントの話し方は、どのように伝えれば伝えたい内容が、それを含めたストーリが伝えられ、理解していただけるかを設計し、効果的なコミュニケーションがとれる力です。

 

クライアントへの話し方といっても、大きく二つあります。

 

一つ目は、話す内容について理解していない相手へ説明する力。

 

それから二つ目はある程度話す内容について理解している相手へ、改善や現状を踏まえた上での新しい概念などを説明する力です。

 

④-A1. 対クライアント(理解していない相手)への話し方

理解していない相手といっても様々なパターンがあり得ます。
 
例えば、現場業務のBPR(ビジネスプロセスエンジニアリング≒既存業務の根本見直しー縮小、廃止、改善、IT化等を含む)を説明するなどのケースでは、業務一本一本を説明することはないでしょう。
 
どういう切り口で説明するのがよいのか、例えば根本見直しをした際の基準やルールに基づいた結果、縮小が何本、廃止が何本、そしてそれらを行っても企業の業務遂行上は問題ない旨を説明する義務や必要があります。
 
ここですべての業務を事細かに説明することは現実的ではないでしょうし、クライアントとしても求めていない為、ディスコミュニケーションになります
 
一方で、新規事業についてクライアントの現場や課長、部長クラスと協議してきた結果のとりまとめ、新規事業の各案についてのビジネスケースや今後の展望、投資案などを説明する際には事情は異なります
 
もちろん説明をうける役員層の方は自社業務領域から飛び出した自分の全く知らない新しいことを役員会なりに持ち込む必要があるので、一定程度の細かい範囲までの説明なども必要になります。
 
例えば、どういう経緯でその新規事業のアイディアが導出され、どういうフィルタリングを受けて最終案として自分自身のテーブルの前に並べられているのか。
 
競争環境や投資するべき資源についての細かい質問なども飛んでくることと思います。

 

④-A2. 対クライアント(理解している相手)への話し方

基礎的な知識を有している相手への説明では、概要や背景と詳細なレベルでの説明の組み合わせをMTGの目的に応じてバランスさせる必要があります。
 
マーケティングを担当している部署に、GTM(Google Tag Manager),GA4(Google Analtyics)に基づいて改善施策を提案し、3か月サイクルなどでどのくらい数字が向上しているのか、低下していたとしたら原因はなにかなどを報告するようなプロジェクトのMTGであれば、詳細ベースの報告のほうが好まれることも多いでしょう。
 
あるいは情報システム関係の部署への、ITブループリントやIT投資計画などを構想し提示するようなプロジェクトの事例も説明します。
 
この場合、基礎的な知識自体は持たれているものの、ブループリントなどの提示を行うのが新しいIT技術(5G,IoT,AI,Cloud等)などを利用している場合には、詳細よりも概要や背景の説明に重点的に時間を割いた方がいいでしょう。

 

④-B.対上司を含む組織内部の話し方

対上司を含む組織内部の話し方は、導く力と同様に上司を場合によってはコントロールする力です。

 

上司は、あるいは組織は基本的にサプライズを嫌います。計画通りにことが進む、計画通りに着地することを望んでいるという事です。

 

サプライズというのはポジティブサプライズ、ネガティブサプライズの双方を指しています。

 

ポジティブサプライズというのは、要するに計画よりも効果が上がったですとか、早くできたですとか、QCDと呼ばれる品質やコスト、納期などにまつわる部分で期待以上の成果を上げたという事です。

 

ポジティブサプライズの問題点としては、特に対クライアントにおける期待値コントロールの失敗につながるリスクを孕んでいるからです。

 

レピュテーションリスクという言葉をご存じでしょうか。レピュテーションリスクは、とある失敗によって信用が落ち、それがほかの案件の失注などにもつながっていくというような概念です。

 

因果関係としては、ポジティブサプライズを続けることでクライアントの内心での期待値が上がってしまい、あがってしまった期待値がゆえに従来通りのQCDの対応をしているにも関わらず、不満を抱かれてやがて契約を切られてしまうというものです。

 

具体的にいうと、本来は70点の及第点をとれていたらクライアントとしても満足だったものが、あるPJで同じ金額にも関わらず80-90点をとってしまい、それ以後も何回か意図せずにそうした点数をとってしまったと。

 

意図せずに高得点をとってしまったがゆえにクライアントの期待はうなぎ上りになったものの、次のプロジェクトでは同じ80-90点をとっていたメンバにもかかわらず、前回は意図せずに高得点をとってしまった為、今回は実力通り70点をとった場合に、その落差にクライアントからはもう少し頑張ってほしいというような反応をいただく。

 

そして70点が続いた結果、契約打ち切りに至るというようなケースです。

 

ネガティブサプライズは上記のサイクルがもう少し早く、一部ショートカットして回ることになります。単に70点をとることが最低条件の筈のプロジェクトで60点や50点になってしまいました。クライアントからの信頼はガタガタになり、契約がなくなりましたという感じです。

 

なので、自分一人で抱え込まずにリスクを感知したら、アラートを挙げるというのが基本的なコンサルしぐさの一つになりますし、この仕草はコンサルティングファームのコンサルタントに関わらず、必要なスキルであると思います。

 

④-C.部下への話し方

部下への話し方、接し方というのはいつの時代も、いくつものビジネス書籍がでるくらいに、リーダシップであるとか、コーチングであるとかそういったものとの関係性の中で語られていたりするものです。

 

この部下へどう接するのか、コミュニケーションをとるのかという点について絶対的な正解のスタンスはないと個人的には考えています。

 

特にコンサルティングファームに所属する人員が多様化しているという話を以前から書かせていただいております通り、従来のコンサルティングファームの出身者に加え、広告代理店業界、ゲーム業界、アパレル業界、メーカー、外資金融、航空機産業、客室乗務員など本当に様々なバックグラウンドの人間とプロジェクトではご一緒することになるのです。

www.shikinagi.work

 

個別の事例、個別の彼我の関係性によってあるコミュニケーションがAという場合には正解になりえても、Bという場合、あるいは時間帯やタイミングが異なれば不正解になりうるという時代に突入しています。

 

④-D.話す力のまとめです

 

他の例えば導く力の記事でも語っている通り、あるいは本記事でも語っている通りにコンサルティングファームの人材は多様化しています。

 

プロジェクトにおいては、キャリアやバックグラウンド、スキル、考え方の何から何まで異なっているメンバへどう語りかけ、どうゴールを共有するのか

 

資料のレビューや会議などの日常においては、世代すらも違うクライアントに対してどう討議し、前向きな議論の果てに結論を導き出すのか。

 

いずれにせよ、相手の理解というものが話す力において一番根幹のスキルになると思います。


相手の理解というのは、相手のいう話だけではなく、その背景までもコミで話すということです。

 

おおよそのコンサルタントには常にそれを行うことは難しいのですが、クライアントに刺さる話をするコンサルタントはある種の天才肌的なセンス(相手の説明からその裏側を読み、相手の意図して話したことの裏側の事情やそこから類推されることを話して見せるようなセンスを持っていたりします。

 

要はビジネス版のシャーロックホームズのふるまい)を持つか、センスを様々な経験や対面しているクライアントの思想や背景の理解によって補って話しています。

 

シャーロック・ホームズの冒険 【新訳版】 シャーロック・ホームズ・シリーズ (創元推理文庫)

 

ただ現実がミステリー小説と違うのは、常に真実ばかりを言い当て続けるのも問題があるという事です。

 

時には真実は邪魔にしかならず、プロジェクトを進める上での障害となるクライアント内のコンサルティングファームへの敵対者を生み出してしまいすらします。

 

というのも、すべてのコンサルティングファームのプロジェクトが成功しているわけではなく、あなたやあなたの上司がデリバリーしている部署ではほかにもコンサルティングファームが入り込んでいるのが現代だからです。

 

企業側も基本的にはリスクの分散というか、ITベンダーでいうところのベンダーロックインに似た状態になるのを避けるべく、テーマや部署別にそれぞれの企業参謀となるようなフリーランスコンサルタントや、コンサルティングファームを抱えています。

 

それらのコンサルタントが全てのプロジェクトを成功に導いているわけではないからこそ、逆に言うとあなたが今プロジェクトをデリバリーしているというケースも当然あるわけです。

 

その結果、失敗がトラウマになりコンサル嫌いの人種を生んでしまったり、様々なコンサルタントが増えているからこそ、コンサルタントから事業会社へ転職してコンサルタントに業務依頼を出す側を担っている人もいます。

 

そういった場合でも、どういう背景を相手が持っているのか、言葉の隅々から拝察し、話の組立を考える力が必要です。

 

それではまたどこかで。

 

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 それではまたどこかで。