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コンサルティングファームで求められる「調べる力」

総合コンサルティングファームのマネージャーが語るコンサルタントに必要な調べる力

総合コンサルティングファームのマネージャーが語るコンサルタントに必要な調べる力

※Amazonアフィリエイトでは自分へのご褒美に梅干しや塩昆布、それからおいしいおにぎりを買おうと思っていますので、よければ。。参考文献などをぽちっといただけますと。

 

皆様はコンサルタントとして必要な力は何だと思いますか。業界知識でしょうか、最先端のトレンドでしょうか。

それらももちろん大事ではありますが、もう少し基礎的な力がコンサルタントとしての力の源泉になります。

そしてそれはすべての役職で基本的には共通です。早速本編に参りましょう。

コンサルタントに必要な5つの力はすなわち、書く力・描く力・導く力・話す力・調べる力です。
これらがコンサルタントの基礎戦闘力を構成する要素となります。もちろんこの土台に論理的思考力があります。

今回お話しする調べる力というのは日常業務の中で、常に求められ続けるというわけでもありませんが、ポイントポイント、要所要所で必ず必要になる力でもあります。

 

この場合の調べるは、この後話すデスクトップリサーチレベルの話もありますし、クライアントへのインタビューレベルの話もあります。

 

クライアントに固有の状況や環境、背景を加味して打ち手や切り出し方を構成していく必要がありますので、その前段として相手を理解することは非常に大切です

 

特にどこの何を調べれば、相手のことが理解できるのかということを体系的に把握しておくことが重要なのです。

 

本記事群では①から⑤まで順番に解説していきますが、
これらは実際の業務においては順不同で必要になります。

 

000 目次

コンサルタントとして必要な力はおおよそ5つ。本記事では、調べる力にフォーカスします。

①書く力・・スライドライティング(いわゆる紙書き力)

②描く力・・構想をまとめ上げる力や、解くべき課題の切り口をみつける力 

③導く力・・部下、クライアント問わず関係者を自然な形で、あるいは時にあえて強引な形で誘導する力

④話す力・・相手によって、緩急をつけた話し方と、適切な粒度での話ができる力

⑤調べる力・・デスクトップリサーチの勘所、ヒアリングの進め方本記事

 

 
001 調べる力についての補遺編

⑤調べる力は、さらに3つの要素に分解できるでしょう。デスクトップリサーチ力、クライアントリサーチ力、エキスパートリサーチ力に分けられます。

 

いずれの力についても前提となる力が必要です。それが解くべき問であるのかの見極めです。

 

調べる力は五つの力のうち、一番最初に求められる力になります。料理でいうなれば、レシピを決めて食材を買ってくる部分です。

 

その課題=料理のレシピが、クライアントの欲しているものでなかったら、そもそも食材を買いに行くところから方向性を間違ってしまいますよね

 

さらには味付けの方向性も変わってくるでしょうか。

クライアントが辛口が好きなのか、甘口が好きなのか、一風変わった風味が好きなのか、それによって解くべき問(レシピ)の作り方、材料のそろえ方も多少なりと変化するのです。

 

いよいよローマと直接対決に挑む際、軍団を指揮したままわたってはいけないルビコン川をわたる際に、かのユリウス・カエサルは「賽は投げられた」と語りましたが、また別の至言を残しています。


「多くの人は、自分が見たいと欲する現実しか見ていない」というものです。

この言葉はクライアントにせよ、コンサルタントにせよ、双方が意識しておかなければならない言葉であると思います。

 

⑤-A. デスクトップリサーチ力
デスクトップリサーチとはそのまま自らのノートパソコンを利用して、必要な情報を収集することです。

 

このリサーチの始まりは、取り組んでいるテーマの概要と要点を理解するところから始まりますし、その理解なくしてはそもそも始まりません

 

クライアントの属する業界の基礎的な知識、どのセグメントがバリュードライバーなのか。競合他社はどのような事業構造を持っているのかあるいはどのようなシステム構成を保持しているのか。

 

業界特有のソリューションは何か、特有のシステムの特徴は何か。

 

パッケージベンダーでクライアントの業界に強いベンダーはどこなのか。グローバルで見たときにクライアントの業界は成長余地があるのか。

 

最新の動き(法制対応や規制緩和、新しい技術による影響)は何があるのか。

 

ここまで述べたマクロの背景、それからクライアント個別の状況を踏まえてどういうレシピ(課題)をどういう味付け(切り口)で調理する(解く)べきなのかを考えてリサーチに取り掛かります

 

参考までに、基礎的な調査リソースとして活用できるものとして、DOW JONES FACTIVAがあります。

 

それ以外にもセンサスという各省庁や国が行っている全国規模の全数調査●●白書などのソースがよくあるソースとして活用できると思います。

 

信頼性の高いグローバルニュースやビジネス情報のアーカイブです。

 

 

⑤-B.クライアントリサーチ力
クライアントリサーチ力とはなんでしょうか。ほぼ例外なく、コンサルタントはクライアントから話を聞くことになります。いわゆるこれをヒアリングといいます。

 

コンサルタントとしての価値の出し方、とくに調べる力における要点というのは、課題を正しく設定できるか(レシピの決定)、それからどれだけの材料をそろえられるか(答えの質と速度)、そして美味しいといってもらえるか(クライアントにどれだけ刺さるか)の三つから構成されます。

 

もちろん、最後の美味しいと言ってもらえるかという点においては、ほかの力も駆使してクライアントに沿ったメニュー、しいてはそれらのメニューを組み合わせたコースを作り出す必要があります。

 

この正しいコース、正しいメニューを相手の求めている味付けや温度で提供するということは繰り返し意識しておきたいポイントです。

 

同じ年代や性別、体格の人にとっても味覚は千差万別であることは論を待たないと思います。ある人は辛党ですし、また別の人は甘党であるとか、お肉は食べることができないですとか、趣味趣向は千差万別です。

 

同じことがコンサルタントの業務を提供する相手、つまりクライアントにもいえます。

 

Aさん(A社)にとって美味しい料理がBさん(B社)にとっては美味しい料理にはならないということが当然あり得る為です。コンサルティングファームとしても、コンサルタントとしても同じような業界、業種、規模の同じ部署だとしてもそれぞれの課題や事業計画は異なってきます。


だからこそ、コンサルタントの提案はオーダーメイドでクライアントの実情や背景を理解した上で組み立て、その組み立てに沿った形でメニューを提供する必要があるのです。

 

⑤-C.エキスパートリサーチ力
エキスパートリサーチ力とは、材料を自分たちでそろえるのではなく、材料を大量に持っている人そのものを連れてくるというパターンです。

 

具体的には、社内のそれぞれの分野のエキスパートを連れてきて、その人に確認することで手っ取り早く、正確で高品質な材料を集めるというリサーチです。

 

エキスパートにリサーチする際の重要なポイントは、前述したこととほぼ同様ですが、解くべき課題(提供するべき料理)を正しく捉えられているかです。

 

エキスパートは正しく高品質な答えを用意することはできますが、それでもプロジェクトに密接にかかわっていることは稀です。

 

だからこそ、クライアントに普段から接しているコンサルタントが正しく解決するべき課題(提供するべき料理)を設定できているかで、エキスパートインタビューの時間を有意義なものにできるかどうかが決まるのです。


また自戒を込めて記載しますが、えてして未熟なコンサルタントは、解くべき課題を定義する時間を惜しんで解答を知りたいと思ってしまいます

 

クライアントは解くべき課題を設定するプロの出題者ではありません。これも料理などと似ていると思います。クライアントは、自分でも気づかない課題を抱えていたりします。


クライアントの言っていること、例えば「このよくとおる道にある穴をふさぎたい」という課題は実は本質的な話ではないのかもしれないということを常に意識する必要があります。

 

クライアントの抱えている課題は、上記例でいえば、「普段使いの道を通行ならしめる」ことであり、もっといえば普段使う「地点Aと地点Bの道を円滑に交通できるようにする」ということです。

 

この課題は穴を塞ぐ以外にも様々なやり方で解決することができます


例えば、「渡し板を通す」「わき道を通る」「穴の上にジップラインを通す」「空中移動用のドローンを配備する」「地下道を作る」「どこでもドアでAとBをつなぐ」などです。

 

相手が望んでいる事と、そこにある事実の間のギャップを正しく認識し、解くべき問を設定することが調べる力に共通する力といえるでしょう。

 

美大や藝大の大学あるいは大学院を卒業した元美大生、美術学修士の方にコンサルタント、特にUXコンサルタントが向いていると一連の記事の中で繰り返し話しています。

 

というのも、上記の課題を変換しより本質的なものに書き換える力とでもいうべきものを美術学学士・美術学修士の方は持っているからです。

 

東京藝術大学、あるいは武蔵野美術大学にせよ、多摩美術大学にせよ、日大芸術学部や女子美術大学にせよ、常に課題への答えを求められ続けます。

 

課題の答えというのは、自分の作品とその解説です。作品とその解説は、コンサルタントといえばスライド(調べる力・書く力・描く力)と説明(導く力・話す力)であり、料理で言えばレシピとコースや料理のコンセプト説明です。

 

四年間、あるいは六年間。美大や藝大が現役で入ることが難しいことを考えればもっと長い期間、課題とその答えに向き合ってきた美大生・藝大生は芸術的な完成を磨きこんできたと共に、課題設定とその回答能力も鍛え上げられてきたといえるでしょう。 

www.shikinagi.work

 

⑤-D.調べる力のまとめです。

この記事では、課題は解くべき問を間違えるとコンサルタントとしてはよろしくないというお話や、クライアントは課題設定のプロフェッショナルではないのでクライアントの言っている事と実態には乖離があるという話をさせていただきました。

 

一方で、課題を提示する人がクライアントであるように、課題についての答えを提出する先もまたクライアントなのです


つまり、そのままコンサルタントが認識した課題の答えを提示すると、クライアントには自分自身の発言、提示した課題に正面からこたえていないじゃないかということになってしまいます。

 

いわゆる、「コンサルっぽい紙」「魂がこもっていない」問題です。

 

クライアントの期待値の話とも関係するのですが、自分自身が出題、提示した課題に正面から答えていないじゃないかという思いを持たれた時、よくクライアントから出てくる表現です。


このことからわかるのは、実際にリサーチする上でクライアントに対して、クライアントの提示した課題Aではなくそれを掘り下げるか変化させた課題Bを解く旨を納得・共感・理解していただく必要があるのです。

 

課題が正しく高品質に解けたとしても、相手がそれを受け取ってくれなければその答えの価値は0になります。

 

このことは常に肝に銘じておきたいですね。

 

それではまたどこかで。

 

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「最後の秘境 東京藝大」に出てくるような人物だったらコンサルティングファームでも大成するかもしれません。

 

何かを突き詰めて考えて考えた先の答えを探し続けるというプロセスは、芸術でもコンサルティングでも変わらないと思うからです。

 

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最後の秘境 東京藝大―天才たちのカオスな日常:

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 それではまたどこかで。