ムサビ通信、武蔵野美術大学 通信課程は入学前の説明会や入学後のガイダンスビデオなどで、繰り返し語られているものがあります。
それは卒業できずに中退、退学してしまう人の率が非常に高いというものです。1年生から入学して4年間で無事に卒業する人の割合は3割を切っているという話も聞きました。
ここでは何故、そこまで無事に卒業できる方が少ないのか理由を見ていきたいと思います。
◇目次
◇本文
ムサビ通信で進学が難しいカテゴリ別の理由
実際にムサビ通信に入学して、通う中で思ったのは想像以上にコースによって年齢層が異なるという事です。
年齢層というよりも、社会的な段階です。
コミュニケーションデザイン、デザイン情報システムコースの2種類に限って言えば、多くの方が働きながらムサビ通信にスキルを磨くため、あるいは生涯学習の為に通われていました。
勿論、会社生活を務めあげて、リタイアされている方もおられます。
2020.08.31追記
2018年から、ムサビは社会人向けにビジネス×アートを標榜する大学院を設立し、積極的にPRを行っています。現役ビジネスパーソンでIT界隈、デザイン界隈にいる方で、ブランドエクスペリエンスやUXについてより深く学び、交友関係を深めながら学習したいという方にはこちらの方がおすすめと判断します。
【お金】年間の学費は諸々コミで約50万
学費による制約 難易度★★★★★
平成から令和に変わる昨今、働き方改革によって、労働時間が減少傾向にあると共に、給与平均も減少傾向にあります。
ムサビ通信は社会人の場合、むしろ学生よりも学費による制約があります。
ムサビ通信の学費はどのような講義をとるのかにもよりますが、私の場合ですと例えば約50万前後はかかりました。
土日の時間をムサビ通信に通う時間に充てられ、かつ年間辺りで約50万円+画材などの費用を出費できる。
それなりに働いているケースでないとなかなか年間50万×通う年数分は出費できないのではないでしょうか。
本件の難易度を最高にしたのは実際にお会いした方、さらには他にムサビ通信に通われている方のブログで、学費をためる為に休学するというお話を見聞きしたことがある為です。
働き盛りの社会人である以上、大きなライフイベントを控えている可能性もあります。
マイホームの購入、子供の出産、進学、留学、両親の入院、介護。
それら様々なライフイベントの関係で通い続けるのが難しくなってしまったという事例もあるでしょう。
【仕事】社会人学生は昇進・転属とも折り合いつける必要あり
仕事の忙しさによる制約 難易度★★★★☆
学費とは異なり、ある程度コントロールできなくもない部分ですが、働き盛りの社会人にとって、まずは仕事をきちんとこなすことが自分や家族、子供の為に必要なこととなります。
ムサビ通信は学びの場である以上、どうしても生きていくため=お金を稼ぐ仕事よりも優先順位を落とさざるをえません。
この場合は、栄転、左遷、昇進、転属、転職など仕事にまつわる様々な事情によって、どうしても通う事ができなくなってしまったというケースです。
サラリーマンからフリーランサーになって時間を作ろうとして、けれど食べていくために仕事を多く引き受けて時間がなくなってしまったというケースもあるかもしれません。
【造詣基礎】造形基礎というムサビ通信の壁
第一の関門になるのが造詣基礎だと思います。造詣基礎はムサビ通信において、全コースの必修となる科目であり、同時に進級や進学の為の大きな関門となる科目です。
それでは個別に見ていきましょう。
造詣基礎1 難易度★★☆☆☆
造詣基礎1は、美術の表現の基底には、常に私達の現実の身体がある。という思想の下、ドローイングを行います。
この科目をこなす中でムサビ通信生は世界堂へ出かけていき、紙の注文や各種の濃さの鉛筆、鉛筆用のカッター、練り消しなどを購入していくことになります。
こちらはドローイングということでまだ難易度が低いですが、関門としては下記2点。
◇躓くポイント
・自分の体より大きな紙、画材を用意して部屋の中で最後までドローイングしきる
・ムサビの事務課へ提出する為のフォーマット、配送方法などを学ぶ
造詣基礎2 難易度★★☆☆☆
観察と描写、デッサンを行う科目です。これは通信課題と面接授業と呼ばれる。実際に吉祥寺や鷹の台といったムサビ通信の校舎へ出かけて行う講義との合わせ技です。
通信課題は頭と手をデッサンするというものであり、このあたりは実際に絵を描くのが好きではなく、デザインや美術の歴史、あるいは彫刻がしたいという方には少し負担になり始めます。
◇通信課題
1-1 自分の頭部をデッサンする。
1-2 自分の手をデッサン、クロッキーする。
◇躓くポイント
・デッサンそのもの
造詣基礎3 難易度★★★★☆
「感情と色彩」という副題がついているこの講義は、ひとつの壁です。周りのムサビ通信生に確認した時でもこれが一番時間がかかったという人は多かったです。
ここでは身近な台所用品や食材、草花から24色の色のレシピを作成します。
それらを整理し、絵の具で同じ色を再現し提出するという課題です。
デッサンなどと並んで確かに色彩表現は美術やデザインを学ぶものにとって、大切な要素です。
身近な色、たくさんの色を経験することによって得られる色彩表現は実り豊かなものになるとは思うのですが、なかなか数をこなすことがまず大きな関門です。
◇通信課題
1-1 色のレシピ
1-2 色のハーモニー
◇躓くポイント
・ムサビの事務課へ提出する為のフォーマット、配送方法などを学ぶ
・24の色数を集め、かつ絵具で表現する
・絵の具セットの準備
造詣基礎4 難易度★★☆☆☆
空間に対する認識を深め、美しい空間の表情を描き出すことを目的とするこの講義は通信課題のみです。
こちらは造詣基礎の中では課題自体は難易度の低い方だという認識ですが、取り組み方がどう取り組んだものか困惑するものだと思います。
本講義は単純に絵を描くのではなく自ら作り出した、あるいは切り出した紙の立体を空間に構成し、光を照射することで生まれる空間の様々な表情を観察したり、描き出すというコンセプトです。
ただ、立体と空間、光と影、そこから生まれる豊かな空間の表情を探るというのは普段なかなかそういう事に関わっていないサラリーマンや様々な方には難しい観点だなと思います。
◇通信課題
1-1 紙の造形
切り出された紙片からパーツを作り、立体的に組み合わせ配置することで立体や空間の可能性を探る。
1-2 空間を描く
立体構成によって生まれる光と影の美しい空間を発見し、平面に定着させる。
◇躓くポイント
・ムサビの事務課へ提出する為のフォーマット、配送方法などを学ぶ
・立体造形なにそれおいしいの状態から、向き合う
結びに
ムサビ通信で進学できない理由、壁となる様々な事柄について紹介させていただきました。
ただ、自分の意志でもっと多くの講義を受講したいから進学しない、卒業しないという方も勿論多くおられます。
ムサビ通信に通う方々は本当に様々で10代から60代、70代あるいはもっと上の年齢層の方もおられるかもしれません。
それぞれの方が様々な目的をもって活動しているので、この記事を参考にしつつ、自分自身は何をしたいのか。最後までやり抜く覚悟はあるのか、考えて入学を決めていただければと思います。
入学した場合は、早い段階で造詣基礎に取り掛かることと、デザイン入門や美術入門を受けることをお勧めいたします。
以下は、個人的なムサビ通信へ通うに至った理由ですとか、通い始めた際の授業ノートの記事です。雰囲気をつかむのにいいと思いますので、よかったらお読みください。