美術入門についての記事の3記事目「版画 元田久治 先生」の記事です。
1. 先生について
本記事の導入として、元田久治先生についてどんなお人なのか、経歴面から見ていきたいと思います。
1.1 講義概要
版画についてや若いころの苦労について、かなり克明に訥々と語っていただきました。
今回は元田久治先生の講座です。元田先生は武蔵野美術大学通信課程の方ではなく、通学と呼ばれる一般にイメージする方で教鞭をとられている方です。
元田久治先生の講義を受けて衝撃的だったのは、2009年7月からノイタミナ枠で放映された「東京マグニチュード8.0」のオープニングに関わられていたということです。
このアニメーション作品は二人の姉弟が夏休み、お台場に遊びに来ていて、そこで震災が発生し、首都圏機能がマヒする中、自宅を目指すというあらすじです。
オープニング映像もそれに基づいて、東京の象徴的な場所が次々に現れるのですが、震災にあったということで軒並み壊れている、通常ではない状態となった国会議事堂や渋谷109などが立ち現れてきます。
その際に絵を描いたのが作家「元田久治」という次第のようです。
1.2 講義詳細
ここからは講義ノートでメモした先生の講義のメイントピックを取り上げていきます。
〇作家「元田久治」の創作理念
そもそも、何故「マグニチュード8.0」という作品の冒頭を元田先生の絵が飾ることになったかというと、創作スタンスとしてずっと「風化」ということを追い求めていたからのようです。
現実にある国会議事堂を風化させて、半ば寂れた、ある種詫びた光景を描き出すというのが主な理念とのことです。
起源は九州産業大学芸術学部絵画専攻を卒業されて、しばらくしてから長崎の軍艦島に渡られて、そこでかつては賑わっていたが、現在は寂れているという風景、光景になにかしら感じるものがあったようで、そこがひとつの出発点というように話されていました。
それから、軍艦島の風景をおもしろい形に合わせた作品を発表していき、いつしか風化させた作品を作ろうというところへたどり着いていくそうです。
それをもう少し深めるのがローマに行ったことで、ローマというのは栄華を誇ったローマ帝国のある種の夢の跡で過ごしているわけで、そこでも中世ですでに寂れていたローマを題材に、逆にローマの繁栄を描いた画家がいたようでその人物を学びにいったそうです。
そして、帰国後描かれたの作品が国会議事堂を風化させるという絵で、軍艦島からローマ、そして日本を象徴する建物で「風化」というテーマが花開いたように思いました。
風化というテーマで空港などを描いていたということで、3.11の震災にの際には個展が中止になるといった事態に遭遇しつつも、少しそこでまた方向性を変えた作風の作品を描くことで「風化」というテーマを掘り下げられているそうです。
〇版画の形式の種類
元田先生の創作理念の話以外にももちろん、版画の基本のき部分の説明もありました。
版画の形式の種類、技法のビデオなど受講生を飽きさせない工夫を盛り込みつつ、いろいろな技法や素材についての説明などです。
2.1個別の先生の講義ノート
元田先生の講義は非常に面白いですが、ぜひ他の先生方の講義もご覧いただければ幸いです。
3.まとめ
朴訥なしゃべり方が非常に耳に残る芸術家らしい先生でした。版画の講義は別のコースでも受けてみたいものです。