2017年10月から開始している経営SLG作品について書こうと思います。
ムサビ通信の講座の中には制作意図ということを作品を作る際に明示化して記載する課題、
講義があると聞いたのが記事を書くきっかけです。
いまちょうどつくっている「退廃的経営SLG」というジャンルで名付けたこの作品に
ついて振り返りを兼ねて制作意図や背景を書いていこうと思います。
〇退廃的経営シミュレーションゲームを作る意図
「箱庭と鈍色の塔で」この作品の着想の基になったのは、東京Skytreeです。
それから小説家になろうという一大小説サイトが普及する時代の前、個人サイト乱立時代
に数多く読んだ小説のひとつです。
その時代のWeb小説は小説リング、楽園、駄文同盟、Newvelあたりのサイト群が
個人サイトへのリンクや新着話の通知機能を担っていました。
なろうやカクヨムがプラットフォーム化した今からはなかなか想像しづらい時代なの
かもしれません。
そんな中で読んである着想の種になったのが、「月の精と二重奏を」の作者の
「遺産の子達へ」という作品です。
Web小説時代の「ソードアートオンライン」の作者の方と同じ小説同盟に属していた
ようですが、残念ながら2011年で更新が止まってしまっています。
ソードアート・オンライン1 アインクラッド 【出版】電撃文庫 【著】川原 礫
本題に戻ると貴種流離譚のお約束である諸事情によって不遇な境遇に置かれ、しかし、その境遇の中でも旅や冒険をし栄光に至る、そして塔の主を打倒するか財宝を見つけて栄達し、名誉を得る。
この作者の方の作品は上に挙げた2点共にそれを踏襲しつつも主人公が栄達を望まず、穏やかに暮らしたがっているという所に、当時妙味を覚えたものです。
両作品ともに残念ながら途中までで更新が止まってしまっていますが、「遺産の子達へ」はプロローグやエピローグを明確に章毎に挿入しているという特徴がありました。
そこでまだ見ぬプロットというか予告のような記載の中、主人公が塔に上るという話がありました。
数十文字、あるいは百数十文字程度の文章でしたが、それ故に塔を上るというお話の雛形
が自分自身の中に芽生えたのが確かなのかもしれません。
それも着想が芽生え、カタチをもって萌芽したのは東京スカイツリーの建設でした。
このブログをお読みになられている方ももしやすると下から見上げるアングルで
ライトアップされたスカイツリーが夜の雲海へ伸びていく写真を見たことが
あるかもしれません。
それがこの作品を作るきっかけです。付け加えるならば、企画自体は
大学時代のものであるので、当時、完成させられなかった夢よもう一度
という側面もあります。
東京スカイツリーが「箱庭と鈍色の塔で」を作るに際して与えた影響、あるいは着想。
それは無視できない確かな影響です。
完成・未完成問わず多少なりと創作してきた作品の中で、実在の建物にインスパイアされて何かつくりたくなったというのは初めてかもしれません。
最後にもう一つ、舞台のガジェットはスカイツリーやそこを上るという物語の目的はWeb小説から影響を受けましたが、もうひとつ物語の背景について影響を受けた作品があります。
それは「天冥の標」シリーズです。
天冥の標 【出版】早川書房 【著】 小川 一水
「天冥の標」をネタバレしない範囲で記載していくと、全10部刊行予定のSF、スぺースオペラ作品で、各部毎に主人公や舞台、時代などは変わりますが、宇宙やそこに浮かぶ惑星の中で幾つかの物語の軸を縦線に物語が展開するお話です。
他にもう二点、小なれど影響を受けている作品があって、それは「FF アンリミテッド」
及び「フラジール」となります。
前者の一部のエピソードと、後者は全般的に廃墟が出てきます。
現実の廃墟はあまり近寄りたくないというのが本音なのですが、物語の中の廃墟には
惹かれるものがあるのはなかなか不思議な気持ちではありますが。
とにもかくにも、物語世界の過去の人物たちが積み上げた歴史を今生きる主人公たちが
歩んでいく。
そこには建物や芸術やなにかが何らかの意味を持って、あるいは何の意味も持たず意味
を失った状態で置かれている。
ものを作るというのは、ごくごく個人的な想いではありますけれど
「遠くへ、可能な限り遠くへ」というものがあります。
地理的にどこか自分の知らない場所で、あるいは時間軸的に自分がいなくなったあとの
時代で自分の作った作品が誰からに読まれている、鑑賞されている。
それは作り手としての冥利につきると思うのです。
そんな感傷的な理由も多分にあるのでしょうけれど、「FF アンリミテッド」および
「フラジール 〜さよなら付きの廃墟〜」は良作、あるいは名作だと思います。
作るにあたって影響を受けたものの制作意図というのは、かなりすらすら出てくるの
ですが、制作意図というのは改めて言葉にするのは難しいものですね。
この作品は結局、「SF世界で塔に上ってみて登り切ったらさ、ファンタジーだったら
空を飛ぶかそこからきれいな海が見えるかするけど、惑星という枠に縛られないSF
だからこそ、そこで止まらず宇宙へ旅立っていけるよね」という話を作りたかった
のかもしれません。
「地に足をつけて歩み、宇宙を目指す物語」
それが今回の作品で作りたかった、あるいは実現したい物語です。
イカロスは鳥にあこがれて、空を飛びました。
イカロスよりも後に生きる彼ら彼女らは、イカロスを超えて、鳥を超えて、
雲海を超えて、星の海へ超えていってほしい。
制作はLight.vnで行う予定です。