@マークぐるりん | ムサビ通信とアート、経営コンサルタント

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2018-Pe-21.落合陽一さん×串野真也さんのトークショー

落合陽一さんの個展が開かれているGYREで、メディアアーティスト 落合陽一さん× シューズアーティスト 串野真也さんのトークショー1回目の部に2018年5月1日に参加してきました。

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トークとしては開幕から明確なテーマが打ち出されており、それはすなわちクリエータとしての方向性が落合さんと串野さんでは違うよね。

 

お互いに、正反対を志向しているという話から始まりました。

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落合さんの作品の創作スタンスは、テクノロジーを利用して視覚、聴覚、あるいは他の五感にも訴えかける作品を作ると、それがあたかも自然にそこに存在するかのように錯覚する。

 

そうした方向を志向しており、補足的な話で下記のお話も出ていました。

 

逆に例えば、図鑑の中の昆虫は見せたいものしかみせない。現物は例えば2cmくらいのサイズだが、図鑑はもっとずっとそれこそ何千、何万分の一まで解像度を上げる事が出来ると。

 

一方で人間の目では解像度が足りないので、どんなにきれいに図鑑では綺麗に見える虫でも、肉眼ではその良さを理解することはできない。

 

一方で、串野さんは蛍光素材を食べさせた蚕の絹で西陣織を織ったり、下記のような靴の作品を発表しているように、切り取られた自然を人工的なもの、靴や服に寄せていくというスタンスのようにお話を聞いて思いました。

 

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出典:【ファッションってなんだろう?vol.3】Masaya Kushino串野真也3/3(2014年4月13日)|ウーマンエキサイト

 

そのあとは、マルタン・マルデラの話、串野さんが伊藤若冲をリスペクトして作品に影響を受けている話。ブナ林いいねという話や、沼を語りたいという話まで取り留めなく、様々な話題が繰り広げられました。

 

また興味深い話としては、ブレードランナーで「本物の木」「紙の本」の質感がわかるひとが出てくるが、ほぼすべての書類が電子書籍だったりデジタルネイチャ―な時代に生まれた子供、あるいは世代がどういった本物の木が何かをしる「生の体験」をどのように積むか、数多く詰めるのかという話もありました。

 

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そのあと、今後の作品テーマという話題で概ねのクロージングを迎えるわけですが、そこで出たお二人のテーマが落合さんが「明治や昭和を自然なものにしたい」串野さんが「受け継がれていくものをつくりたい」というものでした。

 

前者は、例えば田舎に置かれてあるひび割れたポスト。誰かがかつてはそこまで来て、整備し運用していた痕跡。

 

けれど、今はそれを保守する人も、運用する人もいない一つの時代を何らかの形で残しておく。

 

それが今後の落合陽一さんのテーマのひとつだそうです。

 

一方で対談相手の串野さんは、時代を超えて受け継がれるものをつくりたいというようなお話で、作品の中でお二人とも時間軸を考えられているなという印象でした。

 

落合さんの個展の情報は下記にも記載しております。よろしければ、ぜひお読みください。

kusuharyou.hateblo.jp

 

 

 

2018-So-09. 【ニュースまとめ】2018年4月はデジタル情報がフィジカルな世界へと歩み寄る月である一方、伝統工芸の価値の再構成も進む

東京で外資系のIT企業勤め人をしつつ、武蔵美通信に通って創作活動をしている樟葉涼と申します。

 

東京で働くビジネスパーソンとして貴重な朝の時間じさっくりと読めるあっさりしたコンテンツと、アートや創作が好きな方向けの濃ゆいコンテンツを発信できるように最近はブログを書いています。

 

【定例ブログ】

毎月4日は創作状況の報告
毎月14日は月次のブログ運用報告
毎月24日はTwitterで呟いた各種ニュースのまとめと感想

 

今日は3月末から4月の間につぶやいたニュースまとめです。

ニュースラインナップ

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ニュース期間:2018年3月24日(金 )〜4月23日

Ⅰ 国内で唯一、工芸に特化したアートフェア 「KOGEI Art Fair Kanazawa」 第2回が今秋開催決定!

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KOGEI Art Fair Kanazawaは、工芸の価値形成や市場形成を目的に開催するホテル型アートフェアだ。日本初の工芸に特化したアートフェアとして昨年11月に開催し、国内外から29のギャラリー、160名のアーティストの作品を展示販売した。

 

 

 

Ⅱ ARで部屋を自在にコーデ、壁付けアイテムにも対応

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「RoomCo AR」は、家具やインテリアを扱う約20ブランドから実際に販売されている約30万点の商品3Dデータを、AR技術を用いてスマートフォンの画面に実寸表示させるアプリです。

気になった商品が部屋に設置できるサイズか、どこに配置したらいいのか、どれが部屋にマッチするのか、などの具体的なイメージを試着感覚で確認できます。

 

Ⅲ 着々と進むVR/ARの活用、さらなる発展の鍵を3社キーマンに聞く

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2018年3月30日に、東京・晴海のオートデスク株式会社にて、“「産業VR/AR発展の鍵は?」Microsoft/Autodesk/Unityの中の人が語るキーワード”と題された、特別企画セッションが開催されました。

 

 

VR/MR空間でのデザインとは? ペンタブのワコムがシンポ開催

ペンタブレットやCAD関連製品を手掛ける株式会社ワコムは、4月24日に東京・秋葉原UDXにて、VR/MR空間でのデザイン・制作に関するWacom Creators’ Symposium(ワコム・クリエイターズ・シンポジウム)を開催します。

 

早稲田大学を中心に最先端ICT技術をMOOCで公開

 

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超スマート社会を実現するために必要なIoT、ビッグデータ、AIを中心とした最先端ICT技術およびそれらとビジネスとの関係について、座学部分の一部が学習可能な無料コンテンツをJMOOC公認プラットフォーム「gacco(ガッコ)」にて、開講することとなりました。

 

結びに -所感-

2018年4月のニュースセレクションはいかがだったでしょうか。

 

今回、これらの記事を選択させていただいたのは「伝統的な価値の再構成」と「新しい技術による価値の更新」が確かに来ているのだなと思わせられる記事が多くなってきたからです。

 

工芸は伝統の息づく街で価値を再構成する一方で、AR、VR、MR、IoTとアニメーション「PSYCHO-PASS サイコパス」や映画「マトリックス」「ブレードランナー2049」で描かれたような、視覚や聴覚が現実に存在するフィジカルな情報だけでなく、デジタル情報をとらえるようになる。

 

だんだんとそんな世界に近づいていく中で、日々のツイートの中からひとつの気づきや切っ掛けになれればと思うニュースをチョイスしています。

 

 

kusuharyou.hateblo.jp

 

2018-Pe-18.個展「落合陽一 、山紫水明∽事事無碍∽計算機自然」@GYRE(20180420〜20180620)の感想

「落合陽一、山紫水明 ∽ 事事無碍 ∽ 計算機自然」展

@Eye of Gyre

2018年4月21日。落合陽一さんの個展「落合陽一 、山紫水明∽事事無碍∽計算機自然」に行ってきました。

  

 

 目次

 

開催概要

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開催期間:2018年4月20日(金 )〜6月28日(木)
開催時間:11:00〜20:00
会場:EYE OF GYRE 東京都渋谷区神宮前5-10-1
観覧料:無料
最寄駅:表参道駅A1出口より徒歩4分 | 明治神宮前<原宿>駅4番出口より徒歩3分

 

思えば、社会人になってから「個展」というのは初めて参加したことになります。

 

落合陽一さんの作品十数点が展示されている展示会場はエスカレータで登っていくと丁度、反対側になるので行かれる方は少しだけ注意が必要です。

 

落合陽一さん、そもそも最近テレビでよく見るけど実際どんなものをアーティストとして作っていて、どんなテーマで作っているの?

 

そんな質問の答えを知ったり、個展なので展示会全体のアーティストとして何を大事にしているかの美意識を捉える機会ではないかと思います。 

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Ⅰ 展示作品

入口は茶室、幽玄の世界へ誘うのように

入口はこのような形式になっていました。

 

まず匂いたつような濃厚な藤の木の香りに包まれながら、右手の茶室を模したかのごとくかがまないと入れない入口をくぐることになります。

 

入口の円形の窓といい、かがんで入る展示部屋といい、日常から切り離した五感の内の三つ見て、聞いて、嗅いでに期待をしつつ潜ります。

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潜った先にあるものは、未だ人があこがれた止まぬ浮遊の技

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以前行くことが出来なかった展示から移植されたという浮遊する玉。

 

落合さんのTwitter、あるいはNewsPicsのWeekly Ochiaiでトラックを見ていて思いついたというエピソードを聞いたことがあります。

 

確かにGoogle先生に「トラック タイヤ」で画像検索で聞いてみると、類似する形をたくさん見ることができます。

 

ぼんやりと眺めていて思うのは、やはり浮遊というのは憧れだなということです。

 

ライト兄弟、チャールズ・リンドバーグ

 

鳥のように、あるいは雲のように空に飛びあがり空へのあこがれを抱いて、浮遊の技術を秘術を求め続けた先に、宇宙へと飛び出した人類ですが、いまでも飛行機にのる前には多少の感動があるものです。

 

よくこんな鋼鉄の塊が飛ぶものだと。

 

個人的にGONZO制作の『LAST EXILE』(ラストエグザイル)というアニメーション作品が好きなので、その作品の影響があることは認めます。

 

蝶は飛ぶ、いずこかへと時間と空間に依存せず

 

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モルフォ蝶。

 

その青い羽は多くの人間を魅了してきた自然美です。

 

ただ、その羽は脆く繊細で、蝶のコレクションをするには体液が漏れ出て羽の光沢を傷つける可能性のあるお腹部分を除去した形が多いとか。

 

それを複合プリントで金属光沢なども含めて表現し、なおかつ装置で羽ばたきをするというインスタレーションになっていました。

 

蝶の収集、美しい蝶が出てくる作品。

 

連想するのはヘルマン・ヘッセ「少年の日の思い出」です。

 

失った、損なわれたものは二度と戻らない。

 

少年時代のほろ苦い思い出についての記述が情緒を揺さぶる小説ですが、複合プリントで作成されたこの蝶があの作品の中に登場したら、どのような波紋を広げたのか少しだけ夢想しました。

 

蝶の標本化という活動の意味合いが多少違ったものになったことは確かでしょう。

 

対象を人口ととらえるか、自然ととらえるか。

 

Aiboがパーツ交換できなくなって、稼働しなくなったことで悲しみ暮らす方もいると聞きます。

 

人口の蝶と自然の蝶。蝶だけでなく、自然のものと人口のものとが入り交じるデジタルネイチャ―世代の幼少期を過ごしたた人間がどのような感性をはぐくむのか、次の10年、あるいは20年。

 

どのような教育を施すのか、どのような世代が生まれ出てくるのか非常に興味深いなと蝶を見ながら感じました。

 

歪む認識、光が曲がる

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風景が歪んでいる。

 

光が曲がっているように錯覚する。

 

人の目は意外に役に立たない。

 

見たものを見たままに脳が認識している筈なので、けれど見える景色はまるで光の曲がり角にいるかのようで。

 

ぼーっとしばらく眺めていた。

 

結びに -所感-

 落合陽一の世界観。

 

手を動かした結果、出来上がった作品たち。

 

無料ということもありますし、いま様々なメディアで取り上げられ、流れの最先端にいる人がどういう考えでどういう作品を作っているのか。

 

どういう世界観を抱いているのか。

 

そういったことが気になる方はぜひ、ご観覧をお勧めします。

 

 

 

 同じ場所で後日開催されたトークショーについての記事となります。

kusuharyou.hateblo.jp